コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の33回は、1月17日に優勝戦が行われた尼崎ボート「G1 尼崎センプルカップ 開設68周年記念」の回顧から。優勝は丸野一樹で、インからコンマ04のトップスタートを放ち、逃げ圧勝した。前節の児島一般戦に続く連続Vで、年始から「予選トップ通過→準優&優勝戦イン逃げ」という2021年の公約通りの仕事を見事に遂行した格好だ。決して嫌味ではないが、昭和~平成初期の「競艇」に比べ、進入での駆け引きが圧倒的に少なくなった現在の「ボートレース」の王道を地で行く優勝と言っていいだろう。

節目の30歳を前に3度目のG1制覇した丸野一樹の気迫

進入からファンを魅了した、かつての競艇と、枠番通りの流れ作業のような昨今のボートレースとの魅力の比較はさておき、集中力を切らさず、一節間を走り抜いた丸野の走りは、称賛に値する素晴らしい内容だった。今回で3回目となるG1制覇で、目標のグランプリ初出場(賞金上位18人)へ、一歩前進したのは間違いない。今年8月に迎える節目の30歳を前に、頂点を目指す意思の強さ、気迫が感じられた優勝劇。優勝戦で2着だった馬場貴也に負けず劣らずの旋回技術、精神面の強さを見せつけられると、守田俊介→馬場貴也に続く滋賀支部のエースに君臨する日も遠くはないだろう。

丸野に差しで迫ったがわずか及ばずだった藤岡俊介

さて、今回の尼崎G1で飛躍を期待し、激励の「喝」を入れた地元の藤岡俊介が、初日から気迫のレースを見せてくれた。特に3日目、コンマ01のタッチスタートから、まくり差しで突き抜けた一戦は、今節にかける思いを体現した熱いレースだった。予選4日間を通して気迫のレースを続け、予選は堂々の2位通過。準優もトップスタートから気迫の逃げ切りだった。

2号艇だった優勝戦は、2コースから丸野に差しで迫ったが、惜しくもバックで届かなかった。道中で馬場に猛追され、3着に後退したのは反省材料だが、地元でG1を初制覇! という意欲は存分に感じられた。G1は3度目の優出だったが、攻めのレースで勝ち取った「予選2位通過」という結果に、自信をつけたのは間違いない。速攻力、スピード、精神力は優にG1級の藤岡。これに、冷静なさばきが強化されれば、悲願の記念タイトル奪取も夢ではないだろう。藤岡にとっては収穫の大きな地元G1シリーズだった。

43歳古結宏もまだまだ伸びシロあり

そしてもう1人、地元レーサーで存在感を放ったのは古結宏だ。藤岡と同じく、熱い思いを秘めて一節間を走り抜き、見事にG1初優出を決めた。藤岡と同じレースとなった準優11Rは5コースから問答無用の握りマイで2着を追走。気持ちで勝ち取った優勝戦キップだった。優勝戦は全艇がコンマ0台のスリット合戦となり、自身も大外からコンマ04のスタートを行ったが、惜しくも展開なく6着に敗退。だが、藤岡同様、収穫の多い地元G1開催だったのは言うまでもない。

現在43歳。すでにベテランの域に入っている古結の相場は「一般戦の優出クラス」だが、今節のように攻めに徹すれば、まだまだ伸びシロがあることがよく分かった。要は気持ちの持ち方次第で、今年は一般戦で優勝回数を伸ばし、記念戦線でもこれまで以上に見せ場を作っていくと確信している。図抜けた長所があるわけではないが、自在で冷静なハンドルワークが古結の持ち味のひとつ。今節のように、より気迫を前面に出すレースを続ければ、ファンの信頼もグッと増すに違いない。藤岡同様、2021年は古結にも注目したい。

モーター低調もものともしない峰竜太と白井英治のさすがの実力

最後に、モーター低調ながら「優出」という最低限のノルマを果たした峰竜太と白井英治は、さすがという他はない。昨年のグランプリ覇者で現役最強の峰と、ゾーンに入ると驚異的な強さを発揮する白井の共通した武器は、「負けん気の強さ」にあると思っている。もちろん、旋回技術やレースの駆け引きなども超一流だが、根底には「自分が一番」という強烈なプライドがある。決してパワーの劣勢を言いわけにはせず、現状で最大限の結果を求める。その結果が、今節の優出だった。G1で優勝実績のない藤岡や古結が優出を果たした今節の尼崎G1は、勝負事ではハートが重要と言うことを、改めて実証したシリーズだったと言える。