コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の32回は、1月16日に江戸川ボートで開幕する「G1江戸川大賞 開設65周年記念」について触れたい。ご存じの通り、江戸川は全国24の競艇場の中で、唯一、河川を利用している難水面。波風、潮の満ち引きなど、自然の影響をもろに受けるため、選手によって巧拙が顕著に出るレース場と言っていい。

猛者ばかりだが注目は若手の関浩哉

新春恒例の江戸川G1に52選手が参戦。「江戸川巧者」と呼ばれる猛者が多数、顔をそろえている。江戸川G1を3勝している「レジェンド」濱野谷憲吾、同G1・2勝で「江戸川鉄兵」の異名を持つ石渡鉄兵を中心に、三角哲男、山田哲也、大池佑来ら地元勢が、走り慣れた難水面で主力を形成するのは間違いないだろう。

個人的に注目しているのは、最近の若手では珍しく、迷わず握って回るレースが真骨頂の関浩哉(26・群馬)だ。初優勝の2018年ヤングダービー(G1)こそ、インからの逃げ切りだったが、その後2回の優勝の決まり手は1号艇での「抜き」。つまり1マークで失敗しても、豪快に握って回り逆転するポテンシャルを秘めている。まるで、デビュー当初の今村豊(昨引退)を見ているような、キップのいいレースぶりだ。

特に今年1月7日の群馬ダービー優勝戦では、インを江口晃生に奪われ、1マークは久田敏之のかどまくりを許す厳しい展開。だが、1マークで江口の上をたたき、差し込んできた石岡将太を2マークでツケマイ一撃に沈め、優勝をもぎ取った。江口晃生→山崎智也→秋山直之→毒島誠に続いて、群馬勢を背負って立つ、豪快で大物感たっぷりのパフォーマンスは必見だ。

差しやまくりを多用しない戦い方は師匠・土屋太朗の思いから

数年前の江戸川で、最後までピットでボート調整をしていた関浩哉に聞いたことがある。なぜ、握って回るレースに徹しているのか? 関いわく、迷わず握って回るのは、師匠の土屋太朗からのアドバイスだという。若いうちから差し、まくり差しを多用するのではなく、とにかく握って回ってスピードを磨く。それが必ず将来につながる。大きなレーサーになって欲しい。それが愛弟子の関を大きく育てたい、師匠・土屋太朗の思いだった。

かつて今村豊は、本栖研修所で「転覆王」と呼ばれるほど、スピードを磨くことに心血を注いだ。デビュー後も、外から外へのスピード戦で、「怖い先輩たち」をも脱帽させた。もし今村が内のコースにこだわり、また差しを多用する小細工なレースを見せていたら、怖い先輩たちから認められることはなかったと思う。

あえて「怖い先輩」という表現を何度も使ったが、今村がデビューした当時は、今とは比べ物にならないほど、上下関係に厳しく、記念戦線で活躍するトップの先輩は怖かった。だが、今村豊は小細工なしに、真っ向勝負のスピード旋回で、有無を言わさず引き波に沈めてきたからこそ、怖い先輩にもファンにも認められるスーパースターとなった。これは間違いない。

スピード全開の関浩哉の活躍にファンも期待が高まる

昨今の若手の主力選手は、かつての選手とは比べ物にならないほど、高度な旋回技術を持っている。それゆえ、差し、まくり差しも多用する、自在なレース運びが多くなるのは当然だが、その分、今村豊の若手時代のような、スピードだけで圧倒する豪快なレースが減っているのは事実だ。

今のボートレース界の主流である、高度な旋回技術を駆使した「うまいレース」を否定する気はないが、若手時代の今村豊、大島一也、西島義則、植木通彦らがファンを魅了した「強いレース」が、競艇の最大の魅力であるのは間違いないと思う。もちろん、今でも「強いレース」を見せてくれる選手は少なくないが、今節の江戸川G1に参戦する関浩哉には、令和を代表する強いレーサーとなる資質を秘めている。

ちなみに、2019年の江戸川G1で、関浩哉は攻めのレースに徹し、9戦して6回も舟券に絡む活躍(2勝、2着1回、3着3回)を見せている。日本一の難水面と言っていい江戸川で、ターンが慎重になる選手が多い中、迷わず握って回る関は脅威の存在と言える。最年長の西島義則を筆頭に、記念級の猛者がそろう今節のG1江戸川大賞で、スピード全開の関浩哉がブレークするシーンを、ぜひ見たい。そう思っているファンは少なくないだろう。