競艇を愛する熱い思いから、ボートレース業界の随所に切り込むコラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」。節目の第30回は、1月7日に幕を閉じた住之江ボートの2021年新春第一弾開催、「第59回 全大阪王将戦」を振り返ってみたい。

艇界のレジェンド松井繁が差し切りで1着

前回のコラムでも書いたが、艇界のレジェンド・松井繁が51歳にして輝きを増している。準優10Rでは2コースから、3号艇・山崎郡の引き波を避け、ブイ際を鋭く突く、お手本のような差し切りで1着。3コースからスタートでドカ遅れ(コンマ28)した優勝戦は猛省だが、随所に強烈なプライドをのぞかせた正月開催となった。

松井と言えば、服部幸男と並ぶ64期のスーパースター。服部が1992年の平和島ダービーを史上最年少(21歳9カ月)で優勝した際には、松井が服部を出迎え、ピットで抱き合って泣いていたシーンを思い出す。29年前のダービーで服部が繰り出した「まくり差し」は、他艇が止まって見える、刃物のような鋭さがあった。「水の上では先輩も後輩もない!」。テレビCMで服部が口にしたセリフを覚えているファンも少なくないだろう。

2021年最初の服部の走りを見ようと、正月の浜名湖ボートを現地観戦したが、残念な内容だった。エンジンは明らかに劣勢だったが、コース取りで動くなり、スタートで攻める(0台のスタートは1本もなし)なり、プライドをのぞかせる走りが全く見られなかった。準優12Rは、5コースから見せ場なく最下位に敗れている。記念戦線はおろか、一般戦でも信頼が置けず、舟券勝負できない選手というのが、昨今の服部の相場だろう。若き日の輝きを知っている服部ファンの一人として、寂しさを覚えずにはいられなかった。

一方、松井は昨年の平和島グランプリの優勝戦で3着と、再び輝きを取り戻している。「燃え尽き症候群」にも見える、天才型で淡泊な服部に対し、努力型でプライドの高さは艇界隋一の松井は「老いてますます盛ん」と言った印象。今節の住之江で松井が見せ付けた、プライドに満ちあふれた走りに、2014年の尼崎ボートレースクラシック(総理大臣杯)以来、7年ぶり12個目のSGタイトル奪取を予感せずにはいられない。

2021年はもちろん、仮に2022年7月以降に松井がSG制覇を飾ることになれば、安岐真人さんのSG最年長優勝記録(52歳7カ月)を抜く快挙も待っている。史上最年少でSGを制した服部幸男のインパクトは衝撃だったが、長くトップに君臨し続ける松井繁の存在も、競艇史にさん然と輝くもの。いずれにしても、2021年は64期の「不世出」と言える黄金コンビ2人の走りを見守っていきたいと思う。

優勝戦は丸岡正典が節目の50回目の優勝を飾る結果に

さて、記念クラスの実力者が集結した注目住の優勝戦は、パワー断然の丸岡正典が混戦を抜け出し、節目の50回目の優勝を飾った。インからコンマ16の平凡スタートで、1Mはカド上條暢嵩のまくりを許したが、強烈なパワーで伸び返した。だが、上條の懐に艇を並びかけたところで、艇を浮かせて後退。万事休すと思わせたが、2Mで上條と山崎郡が激しく競り合うと、ブイ際を鋭く差して、一気に先頭に躍り出た。

師匠の太田和美(2号艇)とのワンツーはならず、薄氷を踏む優勝ではあったが、運にも恵まれた節目の50回目の優勝劇は、丸岡が再び光り輝くきっかけになるかもしれない。丸岡と言えば、2008年と2012年の全日本選手権(ダービー)でSGを2勝している85期「銀河系軍団」の一人。井口佳典、田村隆信、湯川浩司らインパクトの強い同期に比べ、地味な印象はあるが、粘り強いレースでG1も4勝している実力者だ。

だが、台頭著しい若手の陰に隠れるように、近況は存在感が低下している。抜群パワーに加え、住之江では絶対有利な1号艇を手にしながら、あっさり優勝を飾れないところに、丸岡の低迷ぶりが見て取れる。特に大阪支部には、今シリーズに参戦した上條暢嵩、山崎郡、木下翔太、上田龍星ら、今後の艇界を背負って立つ逸材がずらりそろっている。

彼ら若手精鋭に加え、艇界レジェンドの松井繁や師匠の太田和美、フライングに散ったが気迫を示した田中信一郎、そして同期の湯川浩司らも顔をそろえた新春の住之江開催。そんな層の厚いメンバーの中で優勝を勝ち取った事実は、2021年の丸岡の躍進に直結すると信じている。

松井や太田が世代交代の波の前に、果敢に立ちはだかっているのだから、後輩の丸岡が世代交代の波に飲まれるのは、まだまだ早いだろう。2021年は台頭する若手に立ちはだかる、彼ら大阪支部の「いぶし銀軍団」に注目だ。