コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第28回は、2020年のボートレースのラストを飾る「プレミアムG 1 第9回クイーンズクライマックス」&「G2 クイーンズクライマックスシリーズ戦」(12月26~31日)の事後報告をしたいと思う。

5度目の挑戦にして初めてプレミアムG1を制覇した平高奈菜

まずは「クイーンズクライマックス」でプレミアムG1を初制覇した平高奈菜には脱帽だ。本人は「全くスタートが分からなかった」と言っていたが、準優、優勝戦ともにコンマ01の究極スタート。最後までスタートタイミングをつかめなかった状況の中、この究極スタートを連発したのは、「腹をくくっていた」としか言いようがない。

端的に言えば、優勝への執着心だろう。特筆したいのは、30日のトライアル3回戦。自身が勝って、得点率トップの守屋美穂が3着以下なら、優勝戦で1号艇を手にできる場面。平高は腹をくくってコンマ01のスタートを放ち、気迫でインの小野生奈を差し切った。守屋が4着に敗れ、逆転でポールポジションの「クイーンズクライマックス優勝戦」の1号艇を奪取。そして優勝戦も、優勝しか意味がないとばかりに、再びコンマ01の究極ショットを決め、5度目の挑戦にして初めてプレミアムG1を制してみせた。

まるで先の平和島グランプリを制した峰竜太をほうふつとさせる、頂上決戦での「絶対に勝つ」という気迫、執念。今回優出した6人は、旋回技術、ターンスピードなどテクニック面でも男子トップに負けないものを秘めているが、「勝ちたい」「絶対に勝つ」という、どん欲さ、精神面でも男子トップに大きく近づいてきたと言っていいだろう。

振り返れば、1990年前半、全盛期だった鵜飼菜穂子さん(今年10月に引退)がSG戦線で孤軍奮闘していた頃は、「伏兵以下」の存在でしかなかった。鵜飼さんに続くように、日高逸子、山川美由紀がSG戦線に顔を出しはじめ、2001年の唐津グラチャンでは寺田千恵が女子初のSG優出(5着)を果たした。それでも、当時の女子選手はまだ、SGでは「お客さん」の域を出ることはなかった。

その後、ようやく男子トップと互角に戦える女子レーサーとして横西奏恵さん(2012年12月に引退)が台頭。SGで2度優出(2006年総理杯、2011年笹川賞=ともに6着)する快挙を達成したが、それでもSGの優勝戦(ともに6着)で優勝できるムードはなかったのが事実だ。

平成から令和に移行した昨今、あの横西さんにも負けない、SGで互角に戦える女子選手が少なからず出てきたことが、何とも頼もしい限り。今回のクイーンズクライマックス優勝戦に勝ち上がった6人は、まさにSG戦線でも互角に戦える女子屈指の実力者たちと言える。

インから必勝態勢で勝利をもぎ取った平高、6号艇ながら前付け4コースからコンマ01のスタート決め、3着に食い込んだ遠藤エミ、その遠藤を競り落として2着を死守した小野生奈、パワー劣勢ながら意地の優出を果たした大山千広、そして女子屈指の安定感を誇る守屋美穂に平山智加。いずれ彼女らの中から、SG優出はもちろん、前人未到の女子SG覇者が誕生する可能性は十分と見ている。彼女らには、それだけの技術とハートがある。

クライマックスシリーズ優勝は47歳のベテラン海野ゆかり

一方、「クイーンズクライマックスシリーズ」は、47歳のベテラン・海野ゆかりが気迫で優勝を勝ち取った。3コースからまくった竹井奈美が、1マーク過ぎまで前に出たが、海野が内からパワーで伸び返して2マーク先行。「まだまだ若手に負けない」とばかりに、復権の優勝を飾ってみせた。若手の成長にベテランも刺激を受け、あるいは危機感を覚え、切磋琢磨しながら進化を続ける女子レース界の展望は明るい。

コロナ禍に揺れた2020年。最後も「喝」で締めくくる予定だったが、オールコンマ0台のスリット合戦となった「平和島グランプリ優勝戦」(優勝した峰竜太はコンマ01)同様、この日の「クイーンズクライマックス優勝戦」も、文句ないスリット合戦からの死力を尽くした熱いバトルに、異論をはさむ余地はなかった。男女ともに、年末の頂上決戦はファンも納得の素晴らしいレースだったと思う。

2021年も、競艇を愛するファンを代表して、容赦なく「喝」を入れていこうと思っている。舟券購入で競艇を支えるファンに対し、納得のレース、最大限のパフォーマンスを提供し続けることがプロレーサーの務め。プロフェッショナルに反するレースに「喝」を入れることこそ、当コラムの存在意義だ。「これぞ競艇!」と思わせるレースが一つでも多くなることを願って、筆をおきたいと思う。

競艇を愛するファンの皆様方、2021年もお手柔らかにお願いします。