コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第26回は、2020年のボートレースのラストを飾る「プレミアムG 1 第9回クイーンズクライマックス」&「G2 クイーンズクライマックスシリーズ戦」(12月26~31日)について。先日、峰竜太の優勝で幕を閉じた「SG平和島グランプリ」以上に、ファンの注目度が高いと言っていいかもしれない女子頂上決戦だけに、競艇の魅力を余すところなく見せる、白熱したレースを期待している。

バブル的人気の競艇女子レースだが技術面はいかに

昨今の女子戦は、その売り上げ面でも分かるように、バブル的な人気を誇っている。一方で、スタートのばらつきや、無理筋の突っ込みなど、技術不足が根底にある、昔から女子戦に多いレースをよく目にする。また最近は、若手がスタートで先行しながら、すぐに差しに構える、残念レースも少なくない。勝っても負けても納得いくレース。女子戦に限らず、これがファンに対する最低限の礼儀ということを再認識して欲しい。

今年10月、59歳で引退した今村豊が、過去に言っていた。「僕は天才なんかじゃない。ただ誰よりも努力はしている。どの業界でも、上に行く人は皆、必ず努力している」。本栖研修所時代は「転覆王」と呼ばれ、デビュー1年2カ月でG1を初優勝した翌日も練習に通った。SG優勝を重ねても、誰よりも水面に出て、常に「うまくなりたい」という意識を持ちながら練習していたのは今村だった。

今村は、引退直前まで攻めの姿勢を忘れなかったが、特に若手時代は外から豪快なスピードターンでベテラン勢を圧倒。安易に差しに構えたりせず、常に大きなレースでファンのハートをつかんできた。スタートも「天性」などではなく、地道にスタート特訓を重ね、本番の好ダッシュにつなげた。そして何より、無理筋の突っ込みは自ら禁止し、クリーンなレースで勝ち続けてきた。ファンはもちろん、選手間でも今村を悪く言う人間は皆無と言っていい、選手としても、人間としても超一流。まさに競艇界が誇る、希代のスーパースターと言っていいだろう。

クイーンズクライマックスの主役女子レーサーに求めるモノ

10月1日現在、234人いる女子選手の中で、賞金上位12人のクイーンズクライマックス、その上位12人をのぞく賞金上位者42人によるシリーズ戦に参戦する女子レースの主役たちには、ぜひ今村豊の生きざまを胸に刻み、ファンが見守る水面で「今村魂」を体現してもらいたい。

トップ女子レーサーには言うまでもないだろうが、水面で、整備室で、そして宿舎でも、最大限の努力を怠らず、ファンに納得してもらうレースに徹する姿勢が不可欠。スリットで勝負圏外に去るようなスリットは、スタート特訓をおろそかにしている。自分も相手も生き残れないような、無理筋な突っ込みは、技量不足というしかなく、プロとして論外だろう。

他人にボートを当てないという今村のポリシーは立派だが、中道善博や安岐真人ら往年の名選手のように、他人に無理なくボートを当てながら、しっかり自分が生き残る突っ込みは、「職人芸」だ。語弊があるかもしれないが、水上の格闘技と言われる競艇には「突っ込み道」というものが存在すると思う。ファンの舟券を一瞬で紙くずにする、技量不足からくる無理な突っ込みは、ファンへの背信行為と言ってもいいかもしれない。

期待の守屋美穂、平山智加らを筆頭に若手に手本を示せるか

そして、特に言いたいのは、今村のように大きなレースを心がけて欲しいということ。スタートで先行したら、ターンマークも迷わず握る。女子戦に限ったことではないが、1艇身前後もスタートで先行しながら、差しに構えて失敗するケースが後を絶たない。外の艇の出番をなくしたうえ、その選手自身も消化不良に終わる。こんな展開ほどファンのストレスをためるレースはない。

特に若手の女子レーサーが、せこい、小さいレースをしていては、決して伸びない。目先の着順ではなく、うまくなる! 強くなる! という意思を前面に出した、大きなレースを心がけて欲しい。競艇界のレジェンドである今村豊になることはできなくても、「今村魂」を反映したレースを続ければ、きっと大きくなれる。これは間違いないと思う。

賞金上位12人が出場するクイーンズクライマックスは、女子レーサーの中でも攻めのレースができる、器の大きい選手がそろっている。先日の「平和島グランプリ・シリーズ戦」で男子相手に豪快なレースを披露した守屋美穂、平山智加を筆頭に、大山千広、小野生奈、遠藤エミら、これからの女子戦を引っ張る選手たちには、若手に大きなレースの手本を示して欲しい。

また攻めるレースのレジェンドと言える寺田千恵、田口節子らの熱い戦いからも目が離せない。今年で9回目を迎えるクイーンズクライマックス。優勝経験のある平山、松本(2回優勝)、遠藤に加え、他の9選手を狙うは優勝のみ。女の意地とプライドが激突する年末決戦に注目だ。