コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第22回は、明日12月15日に平和島ボートで開幕する「SG 第35回グランプリ(シリーズ戦)」について言及してみたい。プロの指標である、獲得賞金の上位者から出場権が付与される、1500人を超すボートレーサーの頂上決戦。賞金上位18人による「グランプリ」と、19位~60位の42人による「シリーズ戦」が、ともにSGレースとして開催される。

昨年の覇者も東京の絶対王者もいない今節のSGグランプリ

平和島グランプリの前検日である14日、戸田ボートの一般戦に濱野谷憲吾の姿があった。本来なら平和島グランプリに参戦していなければならない東京の絶対王者。1998年~2006年には9年連続で1億円レーサーとなった「モンキーターンの申し子」が、今年は獲得賞金不足で地元開催のグランプリシリーズの出場権さえ手に入れることができなかった。

その悔しさをぶつけるかのように、14日の戸田一般戦で優勝を飾った。複勝率25%の低調機ながら、初日後半から5連勝。1号艇を得た優勝戦は、1Mで一度は鈴木勝博のまくり差しを許しながら、3艇が接触する2Mを冷静にさばいて、優勝を決めた。

振り返れば、グランプリの前身である2010年の賞金王決定戦の優勝戦1号艇で、スタートドカ遅れから6着に大敗。あの汚名をそそぐ舞台が、悪夢からちょうど10年後となる今年の地元グランプリだったが……。濱野谷の心中を思えば、この日の戸田の準パーフェクトVも慰めにはならないだろう。

昨年グランプリ覇者の石野貴之も、過去グランプリ優勝2回の山崎智也も、濱野谷が敗れた2010年グランプリを制した中島孝平も出場できない今年の平和島グランプリ。獲得賞金がすべてである、サバイバルの2020年頂上決戦がいよいよ開幕する。

潮目を変えたい白井英治と峰竜太

今年の「グランプリ」出場選手で、まず「喝」を入れなければならないのが、獲得賞金9位でグランプリに参戦する白井英治だろう。3節前のダービー2日目に妨害失格で帰郷。前々節の丸亀一般戦は優勝戦1号艇で断然人気に推されたが、まさかの1Mターンもれで3着に敗れた。

そのレースは現地で観戦したが、トップタイスタートの楽なイン逃げ態勢から、信じられないターンもれで2艇に差される悪夢のシーン。現役屈指の実力を誇る白井英治でも、ターンミスはあるということだが、舟券は2-3-1で2万7000円台の高配当となった。白井で勝負していたと思われる、地元の若い男性ファン2人組は「ホワイトシャーク(白井のニックネーム)が負けるなんて……。こうなったら次(次節の丸亀も)も来るしかないだろ!」とリベンジを約束。白井の信頼度が低下したことは間違いないだろう。

その白井は、前節の尼崎一般戦の優勝戦でも、消化不良の5着に敗退。勢いに乗ると手がつけられない男だけに、どうも近況のリズムが悪いのが気にかかる。10月に引退した師匠の今村豊さんが、弟子の白井に託した「グランプリ制覇」。勝負の世界は何よりリズムが重要だが、何とか潮目を変えて、強くて豪快な白井の姿を見せてもらいたい。

同じく、峰竜太のリズムも良くない。今年は優勝13回と猛威を振るっていたが、ここ5節は優出さえできず、わずか8勝止まり。低調モーターが多かったとはいえ、獲得賞金1位でグランプリに参戦する現役最強の峰としては、ふがいない内容と言わざるを得ないだろう。白井同様、一度狂った歯車を戻すのは容易ではないが、ファンは「峰」という名前だけで舟券を買う。絶対王者の意地を見せた欲しいところだ。

調子が上がってきている寺田祥にも注目

逆に、リズムが上昇しているのは、前節のBBCトーナメントでワンツーを決めた寺田祥(賞金ランキング6位)と吉川元浩(同3位)のグランプリ「トライアル2nd」組だ。寺田は白井と同様に、競艇界の「レジェンド」だった今村豊さんの影響を強く受けた山口の逸材。競艇センスに満ち溢れた「天才肌」で、トライアル2ndぎりぎりの獲得賞金6位に残るなど、ここ一番の勝負強さも魅力だ。一方、吉川は昨年以降、SG優勝3回と、48歳にして進化を続けている「職人肌」。タイプは違うが、この2人の動向が、グランプリの優勝戦線の鍵を握るのは間違いない。

シリーズ戦注目の4人の選手

最後に獲得賞金19位以下の42選手による「シリーズ戦」の注目選手は、地元東京支部の村田修次(賞金ランキング36位)、石渡鉄兵(同39位)、長田頼宗(同49位)、永井彪也(同59位)の4人。東都のエースと呼ばれる濱野谷が不在の分まで、地元の意地を存分に見せつけ、優勝を奪取したい思いは、4人とも強いはずだ。特に4月の「G1 マスターズチャンピオン」を制するなど近況好調の村田と、2018年の開設63周年など平和島で優勝6回の実績を誇る長田から目が離せない。ともに最後まであきらめない走りが持ち味で、舟券勝負しても後悔はしない。2人とも、そう断言できる、ファン目線のレーサーだ。