コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第15回は、11月20日に開を閉じた津ボート「開設68周年記念 G1ツッキー王座決定戦」について触れたいと思う。

G1ツッキー王座決定戦優勝者「原田幸哉」の激しい戦い

まずお見事だったのは、優勝した原田幸哉だ。ポールポジションの1号艇に加え、パワーモーター(最高複勝率)の後押しもあり、楽な展開を予想したファンも少なくないと思うが、実は、強力な刺客2人が潜む危険なレースだった。

「第1の刺客」は地元で3号艇の坂口周。節一の伸び足で強引に内をねじ伏せた準優11Rの再現のように、優勝戦もコンマ11のトップスタートから強引にまくり切る勢いだったが、2号艇の井口佳典が壁になったのも幸いして、原田は坂口のまくりを振り切ることができた。

「第2の刺客」は愛知支部(原田は現在長崎支部だが、元は愛知支部)の後輩の平本真之だ。原田が1Mで坂口のまくりを張って出た分、平本に懐を完ぺきに差された。さらに原田は2Mで坂口に突っ込まれ、痛恨の差し遅れとなったが、そこから平本をとらえてしまったのだから、開いた口が塞がらないとはこのことだ。

普通なら絶対に届かない位置から届いてしまった、というのが素直な感想。準優12Rでも2コースの平本に差されながら、パワーで伸び返し、優勝戦も完全に差し込まれながら奇跡とも言うべき逆転劇だから、負けた平本もお手上げだろう。

見た目は、強力なエンジンパワーを味方に優勝した格好だが、初戦から攻めのレースを貫いた原田の姿勢が、今回の優勝を導いたと言っていい。仮に、原田がパワーを頼りに安全運転=守りのレースに傾いていたら、途端に運気が下がっていたに違いないだろう。それがボートレースという競技の怖さでもあり、奥深さでもある。

デビュー以来、名うての速攻派として売り出し、進入でも道中でも、攻めのレースに徹してSG(優勝3回)、G1(優勝15回)タイトルを積み重ねてきた原田だからこそ、最高複勝率モーターを宝の持ち腐れにしなかったと思っている。今節の原田のレースぶりは、SGやG1の壁に突き当たっている、多くの選手のヒントになる。そう断言したい。

佐々木康幸や峰竜太にはもっと攻めの走りを期待したい

その意味でも、守りのレースに喝を入れたい選手は複数いる。まずは4日目3Rに出走した佐々木康幸。準優の勝負掛けで、果敢に6号艇から3コースを主張し、コンマ05のトップスタートを決めたまではいいが、1Mで1号艇をまくりにいかず、差しに構えた挙句、引き波にはまって5着に敗れた。結果的に、準優にも乗れなかった。

佐々木は名うての速攻派で、選手間の信頼も厚い、素晴らしい選手だけに、あの場面では、攻めのレースを見せて欲しかった。佐々木を信頼して舟券を買っていたファンにとっては、何ともやるせないレースだったに違いない。

そしてもう1人、津G1の観戦を終えて、あえて喝を入れたいのは、現在賞金ランキング1位の峰竜太だ。見た目は、いつもと変わらぬように、全身全霊のレースをしているように映るが、どこか気持ちが途切れ気味と感じてしまうのは私だけだろうか。

今節の峰は、決してパワー劣勢ではなかったが、本来なら舟券圏内に残る場面で、圏外に後退するシーンが何度かあった。前節の常滑では途中帰郷し、何らかの理由があるのだろうが、出場するからには、強い峰竜太でなければならない。ファンは峰竜太という名前を信頼して舟券を買う。それがスーパースターの宿命だ。

そんな気持ちの変化を見透かすように、峰は「次点」の得点率19位で、準優進出(得点率1~18位)を逃している。現在、賞金ランキングは1位で、来月の平和島グランプリ「トライアル2nd」での1号艇は確定。今年の優勝回数は13回で、残りはグランプリも含めて4節。そのすべてを勝たないと、野中和夫が持つ年間最多優勝(16回)は超えられない。

2021年前期の適用勝率で1位(8・90)に輝いた峰だが、モチベーションも含めて、多少なりとも攻めの気持ちに陰りが見えてきたなら、ポールポジションから挑む来月の「SG平和島グランプリ」も大きな期待は寄せられない。そんなに勝負事は甘くない。諸々の流れを読むためにも、次節の蒲郡SG「チャレンジカップ」での峰の走りには注目している。