コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第13回は、11月15日に津ボートで開幕する「開設68周年記念 G1ツッキー王座決定戦」の事前情報をお届けしたい。年末に平和島ボートで開催される「SGグランプリ」出場権(賞金上位18人)を巡る争いも、実質的に、この津G1と月末の蒲郡「SG チャレンジカップ」(24~29日)を残すのみとなった。

競艇は賞金がすべての世界

なぜ、競艇界のトップ選手はグランプリ出場を目指すのか? ずばり、プロとしてのプライドだ。積み重ねた賞金額こそが、選手の”格”を決め唯一無二のバロメーター。ファンの舟券で生活が成り立っている業界である以上、いくら努力したかではなく、いくら稼いだかが、その選手の存在価値になる。結果=賞金がすべての世界、それが競艇だ。

昔話を一つ。かつて”艇王”と呼ばれた往年のレジェンド選手がいた。そのレジェンドは、現役時代、海での素潜りを日課として、心肺機能を鍛え抜いた。また、現役時代の減量も過酷を極め、食べては(減量のために無理やり)吐くという、今の時代では到底考えられない食生活を続けたという。

人づてに聞いた話では、引退して30年以上経つ今も、食べると反射的に吐いてしまう、悪夢の食習慣から抜けきれないという。まさに命を削ってレースに臨んだそのレジェンドは、競艇のトッププロとして、最後まで結果=賞金にこだわった。艇王の異名でファンに愛されたそのレジェンドは、「SGグランプリ」の前身である「賞金王決定戦」の第1回覇者として、今も競艇史に名を残している。

今節の最大の注目選手、井口佳典の逆転賞金王なるか

あれから34年。今年で35回目を数える賞金王決定戦(グランプリ)の出場権争いが佳境を迎えている。1月1日からSGチャレンジカップまでの獲得賞金上位18人が出場権を獲得。その中でも、獲得賞金上位6人には「トライアル2nd」からの出場という特別シード権が与えられる。

今節の最大の注目は、地元・津の総大将である井口佳典だろう。11月12日現在、獲得賞金は15位。ボーダーラインの18位守田俊介とは400~500万円の差、また24位の馬場貴也までとは1000万以内の差で、展開次第ではボーダーから滑り落ちる可能性もある。しかもこの後の蒲郡「SGチャレンジカップ」はF休みで出場できず、今回の津G1がラストチャンスとなる。

井口は往年のレジェンドにも匹敵するプライドの持ち主で、グランプリ出場への意欲は今節でも屈指だろう。地元の津G1で必勝(優勝)を期し、2008年以来、2度目のグランプリ制覇で、峰竜太を抜いて逆転賞金王へ。こうと決めたら突き進むのみ! が井口の真骨頂。

シリーズを通して、艇界屈指の”闘将”の戦いぶりを目に焼き付けて欲しい。「これぞ競艇」という、魂のこもったレースが見られるはずだ。

グランプリを2度制した池田浩二、賞金額1位の峰竜太との争い

激励の喝を入れたいのは、2011年と2013年に2度、グランプリを制している池田浩二だ。前節の地元・常滑G1は準優勝戦3着で優出を逃している。常滑の絶対王者として、優出は最低のノルマだっただけに、痛恨のシリーズと言っていいだろう。

11月12日現在、池田の賞金ランキングはグランプリ出場の「次点」の19位。次節に地元蒲郡の「SGチャレンジカップ」が控えているとはいえ、まずは前節の借りを返さないとプライドが許さないのが、艇界屈指のテクニシャンで、誇り高き池田だろう。

漫画『北斗の拳』をご存じない方には恐縮だが、タイプ的に、炎の男と言える北斗の長兄「ラオウ」が井口なら、クールで冷静沈着な次兄「トキ」は池田。そして試練を乗り越え、最強の座を手にした末弟「ケンシロウ」と言えば、峰竜太しかいない。

峰は、今年の獲得賞金が1億4000万円を超え、断然の賞金ランキング1位を独走中。何より、峰の真骨頂は、ケンシロウ同様、相手が誰であれ、一切妥協しないところだろう。グランプリ出場の勝負がかかる地元の井口が相手でも、容赦なく勝つレースに徹することができるのが、今の峰のすごさ。今節の津でも、王者の走りを貫いてほしい。

貴重な身銭で舟券を買うファンの心を思えば、妥協のないレースに徹することが、プロとしての誇り、プライドと言えるのではないか。だが、プロの誇りを貫徹できる選手が、決して多いとは言えない現実が、今の競艇界の課題だと思う。それは理想論と言われれば、それまでだが……。

暮れの平和島グランプリを見据えた、大詰めの今シリーズでは、プロのプライド、誇りに満ちた競艇版の「北斗三兄弟」の走りに注目してもらいたい。