コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第9回は、10月25日に幕を閉じた「SG大村ボートレースダービー」を振り返ってみたい。

優勝は重圧をはねのけた静岡の深谷知博選手

優勝したのは静岡の逸材、深谷知博だった。初のSG優出の重圧、優勝戦1号艇の重圧、18億円近く売れた優勝戦で人気一本かぶりの重圧、勝って当たり前の重圧、そしてフライングだけは絶対切れないという重圧……。多くのプレッシャーを背負う中で、平然とコンマ06のトップスタートを決め、あっさり逃げ切ってしまうのだから、文句ないSG戴冠だ。

かつて、多くのトップレーサーが、SG優勝戦1号艇の重圧に敗れてきた。漫画『モンキーターン』のモデルと言われる濱野谷憲吾が、2010年の賞金王決定戦(現グランプリ)の優勝戦1号艇でコンマ26のドカ遅れ(6着)したのは有名な話だ。深谷にとっても、経験したことのない重圧があったはずだが、コンマ06のトップスタートからイン先マイという、普段通りのレースをするあたりは、服部幸男~菊地孝平~坪井康晴~徳増秀樹らにつながる静岡勢の勝負強さを受け継いでいるのかもしれない。さらなる飛躍が楽しみと言える。

地元長崎勢は一人も準優進出ならず

一方、喝を入れなくてはならないのが、3人の地元長崎勢。地元のハンデがありながら、1人も準優に進出できなかったのだから、言い訳にならないだろう。低調モーターの原田幸哉と赤坂俊輔は、まだ仕方ない面もあるが、エンジンパワー(連対率59・6%)から準優には乗らなければならない桑原悠が予選で散ったのは、実力不足と言うしかないだろう。予選5戦で3連対も、残り2戦が6着で、得点率はボーダーラインにわずかに届かない19位(18位までが準優に進出)。結果的にこの6着2本が致命傷となった。

現在の桑原悠とトップ選手の決定的な違いは「気迫の差」だと思っている。それを証明するレースが、ダービー最終日の9R「発祥地選抜戦」。1Mは決してスムーズなまくり差しとは言えなかったが、パワーの後押しでイン瓜生に舳先が掛かりながら、舟を引いてしまい、結果5着に敗れた。あそこは、SGクラスの選手なら絶対に引かない場面。しかも期待を集める地元のSGだ。この辺の気迫の甘さが、殻を破れない原因のひとつだと思う。SG級のポテンシャルを秘め、期待している選手だけに、誰が相手でも引かない気迫を見せて欲しい。

SG大村ボートレースダービーを振り返って

総括として、今回のダービーは、まずまずのレース内容だったと思う。大村は日本一インが強い水面(平均勝率は67%前後)と言われているが、今回のダービーのイン逃げは、初日から8、4、4、8、9、9本で、72レース中42本。勝率は58・3%で、イン逃げ率は10%弱ほど低かった。これは複数のレースで、選手がコース取りやスタートで攻めた結果。インの勝率を下げるレースこそ、エキサイティングで面白いレースとなる。

毎回名前が挙がる西島義則、江口晃生、深川真二のイン職人はもとより、エンジン劣勢ながら、最後までスタートで攻め続けた地元の原田幸哉らも、影のMVP候補と言っていい。原田が最終日1Rでコンマ06の気迫のスタートから、意地のまくり差しを決め、今節初勝利を飾れば、西島も最終日6Rで2コース差しを決め、同じく初白星を挙げた。負け戦でも最後まであきらめない彼らの走りは、SG優勝戦にも負けない価値がある。競艇は技術の競技であるとともに、ハートの競技でもある。ファンの心に響くレース、選手が増えていけば、競艇はもっともっと面白くなると思う。

余談だが、びわこボートでは、10月26日の開催から、35年ぶりに、1マークの位置を対岸側へ3m移設(従来の陸側から44mを47mに移設)してレースが行われている。安全確保が目的というが、よりインが強くなるのは明らか。インが強い→舟券が買いやすい→売り上げが上がるという、近年の競艇界の勝利の方程式? に乗った変更だが、レースの魅力という点で言えば後退と言えるのではないか。

なぜか舟券の売り上げが順調な今は、買いやすさ重視でもいいが、将来的に売り上げが落ち込んだ時、現状の買いやすさ重視の施策がどう出るか。競艇に限らず、どの競技も、根本は競技自体の魅にかかっている。イン重視に限らず、競艇ではないボートレースというネーミング、横文字が並ぶSGレースのネーミング、厳しい進入・航走・フライング規制……。ファンの感覚とは、少しずれがあると思っているのは、私だけだろうか……。