コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第7回は、10月19日に幕を閉じた「G2びわこ秩父宮妃記念杯」を総括したい。

大上卓人悲願の記念タイトル奪取

19日の優勝戦は久々に競艇らしい、気迫あふれるレースだった。大上卓人が4カドから、妥協のない絞りまくり一撃。絶対まくる! 絶対G2のタイトルを取る! そんな秘めた思いが、レースに反映されていた。同期でカド受け3コースの地元・丸野一樹が、艇を合わせ、必死に抵抗したが、大上は迷うことなく絞り切り、人気のイン河合佑を引き波に沈めて悲願の記念タイトルを手に入れた。

こうした闘志あふれる泥臭いレースを見せられれば、誰も文句を言うまい。素直に大上の気迫のG2初制覇に拍手だ。大上に限らず、確かな技術を持つ若手たちには、こうした妥協のない、気迫のこもった熱いレースを、今後のG1やSG戦線でぜひ見せて欲しい。SG常連のトップ選手に比べて、若手に確実に不足しているものは、妥協のない気迫だけと言っていい。むしろ旋回技術、スピードは、今の若手の方が上と見ている。世代交代の鍵は「妥協しない」という一点。優勝戦での大上には、一切の妥協がなかった。

このびわこボートで開催される「G2秩父宮妃記念杯」の面白いところは、通常のG1レースと違い、「記念級のA1レーサー」「勝率6点未満の格下レーサー」「50歳を超えたベテラン」「精鋭の女子レーサー」という、ユニークな組み合わせだろう。今回、勝率6点未満の選手は10人で、勝率4点台の選手も数人いた。彼ら格下選手にとっては、記念級のトップ選手相手に「名前を売る」大きなチャンスなのだが、予選を突破して準優に進めた選手はゼロ。時折、見せ場は作っていたが、実力差は明らかで、「喝」を入れざるを得ない残念な結果となった。

ベテラン勢は予選落ち、女子勢もベスト6には残れず

また渡邉伸太郎(52)、平石和男(54)、烏野賢太(52)と3人の50代のベテランがそろって好モーターを引き当てたが、そろって予選落ち。もう少しベテランの味が見たかっただけに残念だ。女子レーサーは遠藤エミ、小野生奈、守屋美穂の3人が参戦したが、準優に駒を進めたのは地元の遠藤エミただ一人。その遠藤もベスト6には残れなかった。終わってみれば、主力級が順当に勝ち上がる平凡なシリーズだったが、最後に大上が気迫のレースで、シリーズをいい形で締めた印象だ。

淡泊なレースではなくもっとエキサイトな展開が見たい

コラムの締めになるが、今シリーズに限らず「喝」を入れたくなるのは、レースに動きがなさすぎる点だ。今回のこのびわこも、相変わらずの淡泊なレースが多く、ため息が出ることも少なくなかった。最終日は12レース中、10レースがイン逃げ決着。負け戦とはいえ、誰も進入で動かず、スタートも攻めずでは、枠なりのイン選手が流れ作業のように先マイするのも当然か。舟券もインから誰を相手に買うのか、という選択肢しかなく、低配当の決着が圧倒的に多かった。

これで何が面白いのかと、つい思ってしまう。とても競艇が標榜するエキサイティングなレースとは言えないだろう。ファンに夢を売るレースというなら、結果はどうあれ、全選手がファンを意識し、レース水面で可能な限りのパフォーマンスを見せて欲しいもの。そう思うのは私だけだろうか。

その最たる例が5日目の準優勝戦。10、11、12Rはともに1号艇が逃げ、2号艇が差して優出条件の2着を死守するという、何の変哲もないレースの3連発。どれも2連単は1→2の決着で、10、11Rは2連単210円、12Rは250円だった。準優は基本的にエンジンのいい順に内枠から並ぶのだから、進入で動きがなければイン逃げの本命決着になるのは当たり前だろう。

優勝戦の大上のように、泥臭さを前面に出したレースが増えれば、競艇はもっともっと面白くなる。まくれる態勢なら迷わずまくる、内寄りが欲しいなら迷わず動く、パワー劣勢ならスタート一撃にかける。6選手が水面でベストを尽くせば、レースに動きが出て、エキサイティングな展開が増える。いよいよ大村のダービーが開幕する。ダービーでは、淡泊なレースが当たり前となっている昨今の風潮を打破するレースに期待したい。