コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第6回は、10月20日に開幕する「SG大村ボートレースダービー」について触れたい。ダービーは1953年(昭28)に創設され、今年で67回目を迎える、競艇で最も伝統と格式のあるレース。先日引退した今村豊が最も重要視し、史上最多タイの3度の優勝(瓜生正義と2人)を果たしたている。66回の歴史で、ダービーを連覇したのは今村豊(87、88年)しかいない。

初優勝に期待がかかる石野貴之、萩原秀人選手

そんな伝統のダービーで初優勝を狙える実力者2人に、期待込みの喝を入れたい。まずは昨年のグランプリ覇者の石野貴之だ。とにかく、昨年の賞金王に近況、覇気を感じない。ここ2節の徳山と平和島のG1では計19戦して5勝、2着2本止まりなのは、パワー劣勢だっただけに仕方ない。気になるのは6着が9本もあることだ。石野と言えば、最後まであきらめない走りでファンの信頼も厚いトップレーサー。それが、2走に1回が6着というのだから、王者の石野だけに喝も入れたくなる。

競技は違うが、「ミスター競輪」こと中野浩一氏は、現役時代に1236走(666勝)して、どん尻の9着はわずか4回。「勝ち星より9着の少なさが自慢」と話していた。これぞ真のプロフェッショナル。ファンは道中の走りもしっかり見ている。

石野は本来、SGレースで常にドリーム戦に乗っていなければならない実力者。それが、今年のダービーでは、勝率順で30位相当(ダービーは昨年グランプリ出場の優先枠で出場)と、昨年までの輝きを失っている。石野に限って「燃え尽き症候群」などとは思いたくないが、今回のダービーでは近年の輝きを取り戻す、熱い走りに期待したい。

そして、期待込みで喝を入れたいもう1人は萩原秀人だ。近況は一般戦回りだが、前節の常滑一般戦では優出を逃している。確かにエンジンは低調で、何度も調整と試運転を繰り返していたが、一般戦では優勝がノルマとも言える実力者だけに、現地観戦していて残念だった。断然人気を背負う一般戦なら、進入で大胆に動くなり、ぎりぎりのスタート行くなり、負けてもファンが納得するパフォーマンスが不可欠。SGでもピンラッシュが可能な萩原だけに、ダービーでの奮起の大暴れを期待している。

プロの魂を感じさせる峰竜太、茅原悠紀選手

対照的に、真のプロフェッショナルのレースを披露しているのは峰竜太と茅原悠紀だろう。峰は直前の16日の丸亀G1「京極賞」優勝戦で今年13回目の優勝。野中和夫が1976年にマークした16回の年間最多優勝記録更新が、いよいよ現実味を帯びてきた。

何より峰のプロ魂を痛感させられたのは、丸亀G1の優勝戦で見せた、インからコンマ01の究極ショット。次節にダービーを控える状況では、まずお目にかかれない気迫のスタートだ。まずは目の前のレースを絶対にモノにするという、峰の気迫に脱帽だ。もちろん、他の5選手はなすすべもなく、改めて、峰と言う男のすごさを脳裏に刻んだことだろう。

「峰は別格」「峰がインの時は絶対勝てない」……。こうした選手間の心理戦が今後のレースにも生きてくる。峰は一般戦の多摩川も含め、ここ3節で27戦して【14・10・2・1】。舟券を外したのはわずか1回で、勝率52%、連対率89%。ファンの絶大な「信頼」を力に、選手間での「別格」という評価も味方に、このダービーも絶対王者の走りで今年14回目の優勝へ突き進むか、注目したい。

また”天才”と呼ばれる茅原も、ファンの存在を強烈に意識しているプロフェッショナル。F2のハンデを背負いながら、峰が優勝した丸亀G1で準優勝。2走目から7走連続で連対(1着か2着)を果たしたのは、プライドの高さの裏返しだろう。もしF2の身で今回のSGダービーを優勝することになれば、競艇界に新たな伝説を刻むことになる。

ちなみに、福岡の田頭実(ダービーは不出場)は2005年の若松G1で、前人未到のF3での優勝を飾っている。また”モンスター”として艇界に君臨した野中和夫(引退)は、1982年のMB記念(現ボートレースメモリアル)で、F3の身ながら優出(3着)。実力とハートを兼ね備えた茅原なら、F2でSG優勝の離れ業も夢ではない。

競艇界が誇る「イン職人」の3人の存在

最後にひとつ。古き良き競艇界が誇る”イン職人”の3人がダービーを大いに盛り上げてくれそうだ。参加最年長58歳の西島義則、55歳の江口晁生、そして深川真二の3人だ。艇界で屈指のインの鬼たちで、特に西島と江口のコース取りは妥協がない。1号艇の選手には何とも頭の痛い存在になるが、競艇発祥の地・大村で、「これぞ競艇!」というレースが見られるかと思うとわくわくする。イン職人たちの「プロの仕事」にも注目してもらいたい。