コラム「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」の第5回は、10月14日に開幕する「G2びわこ秩父宮妃記念杯」について触れたいと思う。

競艇ファンが納得できるレースが少なくなっている

まずは愚痴をひとつ。最近、「ファンが納得できるレース」というものが、どれくらいあるのかと、ふと思う。枠なりで、流れ作業のように内から旋回していく近年のレース傾向も、ファンが納得しているとは思えないが、それ以前に、ファンもあきれる、残念なレースも少なくない。

先日も、2コースの某選手がイン艇に対し、1艇身以上ものぞいているのに、何と差しに構えた挙句、差せずに後退という、とてもプロとは思えないレースがあった。2コースに限らず、まくるべき隊形なら、迷わずまくる。それが「競艇道」だ。それを、まくらずに、せこく差しに構えたりすると、外の艇の動きが封じられ、レースが実につまらないものになる。

競艇のレースも映画やドラマと一緒で、キャストがそれぞれの役割を果たしてこそ、いいものが生まれると思う。まくる隊形に持ち込んで、豪快にまくる選手が主役なら、まくりマークの選手は準主役。また、まくられて引き波に沈む内寄りの選手も立派な脇役だ。

だが、まくるべき隊形でまくらない選手は、自分の役割を果たさないだけでなく、他の選手の役割をも封じてしまう。自分の役割を果たさない選手は、最低のドラマを見せられるファンの気持ちを考えたことがあるのだろうか。プロなら、常にファンを意識し、ファンが納得できるレースを心がけなければならない。それがプロスポーツである競艇、特にファンの舟券で成り立っている競艇の選手の責任だと思う。

常にファンが納得できるレースを、可能な限り実践してきた選手の「系譜」というものがある。平成以降では、引退した植木通彦を筆頭に、現役では市川哲也、今垣光太郎、峰竜太らに代表される選手たちが、常にファンの存在を意識し、ファンを納得させるレースのみに専念してきた。

愛されキャラの峰は特異な存在だが、そうした真のトップ選手は、他の選手と、あつれきが生じることも少なくなく、ピットでは孤独な存在となることが多い。一方で、ファンからは絶大な信頼を得ることになる。命の次に大事な金を張っているファンは、各選手の水面でのレースぶり、生き様を、しっかりと見届けているということだろう。

びわこG2「秩父宮妃記念杯」に期待

14日開幕の伝統のびわこG2「秩父宮妃記念杯」では、ファンを納得させるレースが多く見られるのではないかと、ひそかに期待している。というのは、冒頭の「系譜」の体現者とも言える選手が複数参戦しているからだ。

その代表格は田頭実(53)。言わずと知れた競艇界屈指のスタート野郎、まくり屋だ。わずかでも、まくれる隊形になれば、ぐいぐい絞り込んで、豪快にまくっていく。たとえ、まくりが飛んでも、田頭を買っているファンは納得がいく。だから田頭はファンから信頼されている。

余談だが、田頭と言えば、F3で史上初の優勝を飾った2005年の「G1若松ダイヤモンドカップ」が伝説だ。同一期間内に4本目のフライングを切れば引退勧告となる瀬戸際で優勝。決め手はまくり差しだったが、あの状況で放ったトップスタートは、常にファンに納得してもらうレースに専念してきた”プロ競艇選手”田頭だからこそ、なしえたものだと思っている。今節も若手たちに、ファンを納得させるレースの何たるかを見せて欲しい。

元祖怪物の太田和美もデビュー節で優出して以来、常にファンの存在を意識してきた選手のひとり。他にも、岡崎恭裕、齊藤仁、長田頼宗、柳沢一、前田将太、木下翔ら記念クラスがそろい、白熱のシリーズとなりそうだ。

地元勢では、昨年8月のびわこG1に続き、今年1月の唐津G1も制して勢いに乗る丸野一樹を筆頭に、この大会の前々回覇者で、今年のSG平和島クラシックで優出2着の吉川昭男、川北浩貴、君島秀三ら精鋭が集結。また女子も地元の遠藤エミに、小野生奈、守屋美穂の3人が出場する。

12日の丸亀G 1の2日目では、峰竜太が後方からの追い上げと、道中の握りマイ連発で2着2本にまとめた。峰の妥協のないレースは、彼の舟券を買っているファンも買っていないファンも納得させる説得力がある。競艇界が誇る真のプロフェッショナルと言える。今節のびわこG2も、峰や田頭が体現している「ファンが納得できるレース」を期待したいと思う。