初めて”競艇”に出会ったのはまだ昭和の時代。いきがっていた未成年の頃だった。無類のギャンブル好きだった兄貴分に無理やり連れられ、殺伐とした、すし詰め状態の古い戸田のスタンドに入った。 

今でも鮮明に覚えているのは、その日が一般戦の優勝戦で、イン渡辺義則と2コース長嶺豊(ともに引退)でオッズは一本かぶりだったことだ。当時は3連単などなく、2連単しかない時代。確か前半の数レースは2連複のみの発売だったと記憶している。 

優勝戦は渡辺→長嶺の本線が2倍台、長嶺→渡辺の裏目も4倍台という銀行レースだった。兄貴分の「優勝戦は丁半五分五分。俺は裏目で勝負する。お前は自分の勘を信じて買ってみろ!」というアドバイスに従い、私は2倍台の本線に有り金をつぎ込んだ。 

結果はガチガチの本線で決まり、私の7~8万の手持ちは20万近くにふくらんだ。一方、大事な仕事絡みの大金に手をつけ、すべて溶かしてしまった兄貴分のひきつった表情は今も忘れられない。その後、兄貴分は追われる身になった。ギャンブルの魅力と怖さを知ることになる、競艇との出会いだった。 

競艇と向き合うこと35年「競艇=我が人生」

以来、40年近く、競艇、現在はボートレースと呼ばれるギャンブルと向き合ってきた。取材等で業界内部に身を置く期間も長かったが、現在は業界の外から競艇を見続けている。 

現在の”ボートレーサー”の技術、ターンスピードは、昔の”競艇選手”とは比べようもなく進化している。レースの迫力だけなら断然上だろう。一方で、競艇という競技本来の魅力、泥臭さ、選手の個性などは、逆に大きく退化していると思う。その理由の一つに、コース取りの面白さが消失しかけていることがある。 

一時落ち込んでいた売り上げがV字回復しているのは、競艇場に行かずとも手軽に買えるリモート舟券の威力に他ならないが、肝心のレースの魅力がV字回復しないボートレースの将来に、一抹の不安を感じているのは私だけだろうか。 

どこも”すし詰め状態”だった競艇場で、ファンが人間臭いレースに熱狂していた時代を知る一人として、現在のボートレース界への不満、提言を自由に書かせてもらおうと思う。競艇を愛し、競艇=我が人生と自負する男のたわごととして読んでいただければ幸いです。 

第1回コラムはG1宮島チャンピオンカップ(開設66周年記念)

さて、「業界歴35年 御大Xが競艇に物申す!」と題したコラムの第1回は、稲田浩二(35・兵庫)の優勝で幕を閉じた「G1宮島チャンピオンカップ(開設66周年記念)」にスポットを当てたいと思う。 

優勝した稲田は、昨年9月の戸田63周年記念でG1初タイトルを手にした自信が、随所に見て取れた。パワー機に当たったとはいえ、節間8戦6勝の安定したレース運びは称賛に値する。準優、優勝戦ともに1号艇から危なげないイン逃げを決めている。一皮むけた今の勢いからすれば、SGタイトルを手にする日も、そう遠くはないだろう。 

一方、まず”喝”を入れなければならないのが、準優10Rで1号艇だった本多宏和(33、愛知)だろう。人気を背負うインでコンマ21のスタートは論外だが、カド受けの篠崎元志(34・福岡)のまくりに対し、インから何の抵抗もできなかったことは言い訳できない。 

カドから攻め込んだ新田雄史(35・三重)を、カド受けの篠崎元志が止め、その勢いで一気にまくって出たレース。本多は機力では抜けていたが、SG覇者である新田、篠崎の勝負に対する気迫に負けたと言える。何より、まくり艇を張って出るという、インの最低限の仕事もせず、5着に沈んだレース内容は猛省だろう。結果でファンの信頼を取り戻していくしかない。 

また準優11Rの藤原啓史朗(30・岡山)も”喝”だろう。明らかにイン白井英治よりパワー上位で、2コース差しから、バックは白井の舟に舳先が入っていたが、白井の気迫に押されるように、2マーク手前で後手を踏んで3着に敗退。気迫で舳先をねじ込んでいれば、準優1着で優勝戦に進出し、G1初Vの可能性もあっただけに、何とも悔やまれるレースになった。 

本多も藤原も、準優というここ一番で、エンジンパワーの恩恵を生かせず、チャンスを逃した。気迫で優勝戦に進出した白井、新田、篠崎元ら銘柄級との間に、歴然とした開きがあるのは間違いない。本多、藤原ともに、この敗戦を糧に、技術以上に精神面を磨いてもらいたい。 

宮島G1を振り返って

最後に、今回の宮島G1を振り返って、総括的な”喝”を入れたい。初日から最終日までの6日間で、進入で動いたのは、わずか6人(ピット離れで遅れたレースは除く)、延べ13レースしかなかった。内訳は西島義則が6回、前本泰和が3回、市川哲也、上平真二、山口剛、篠崎元が各1回。 

地元(広島)の選手以外で動いたのは、2日目1Rの篠崎元のみ。進入に動きがあったのは全体の18%で、仮に地元御大の西島が出場していなかったら、その率は9・7%まで下がる。結果、イン逃げは初日と最終日の10本を筆頭に、全72レース中50レース。イン逃げ率は何と7割で、ここに競艇(ボートレース)の魅力が半減している理由がある。 

競艇という競技の魅力は、「ピット離れ」→「コース取り」→「スタート」→「1マークの攻防」→「道中の競り合い」で成り立っている。大きく分ければ「コース取りの攻防」と「スタートを含むレースの攻防」だが、大きな柱の一つのコース取りの魅力が、今のボートレースでは、ほぼ消失してしまっていると言っていい。 

かつての競艇の時代は、コース取りから各選手が個性を発揮し、筋書きのないドラマが無数に誕生してきた。イン屋、差し屋、まくり屋、カマシ屋、6コース専門など、各選手の個性に応じて、コース取りで動くのだから、見ているファンにとっては、スタート後の攻防と同じくらい、コース取りで楽しめたのである。コース取りについては、おいおい触れるが、今のボートレースは大事な魅力的コンテンツを自ら放棄しているに等しいのではないか。 

その意味でも、4日目の6Rで、6号艇の西島が2コースを奪い、絞り気味にイン西野雄貴をまくっていったレースは、今シリーズのベストバトルと言っていいだろう。山田佑也に差されはしたが、バックで山田にガツンと一発食らわせ、2Mで差し返して1着をもぎ取ったレースは、昭和の競艇を知る西島の真骨頂だ。今シリーズを面白くした、影の立役者と言っていいだろう。 

枠なりから、スマートでスピーディーなレースも結構だが、進入から迷わず動き、道中もルールの範囲で最大限格闘するレース、選手の個性が激突する泥臭いレースこそ、今求められている気がしてならない。